ずっとボリのお腹にぶら下がっている大きなしこりを心配してはいたものの、ウィッシュを誤診したような何の設備もない獣医ではどうしようもないと諦めていたのですが、やっと検査をして手術も出来る獣医を見つけました。
獣医によると、乳腺腫と破れた腹膜から腸が飛び出しているので、腸を押し込んで皮を縫合する手術になるが、開いてみないと程度は分かず、成功する保証はないので手術するかの判断は任せるということでした。
しかし放置するといつか必ずお腹が破裂して危険とのことで、私達は手術をすることに決めました。
手術は子宮の炎症部の切除と避妊手術も併せて行われました。
パパが術後の説明を聞きに行った時には、ボリは元気に見えたので安心して帰りました。
いつも私達が犬のことで怒られているあの大家さんにも「地域犬のボリを助けてくれて貴方に神のご加護がありますように」と感謝されて驚きましたが、ボリは地域の女王なのです。
しかし数日後、獣医さんから「余った皮を切除したから退院延期」と突然言われました。
上向きで皮の縫合手術をしたせいで気づかなかったらしく、立てるようになってみたらかなりの皮が垂れ下がっていたそうです。
そしてその手術後、食事のためにエリザベスカラーを外して目を離した時にボリが自分で噛んで傷口が開いてしまって感染症になり、それを抗生剤や塗り薬で治療しているので、また1週間退院が延期と言われました。
獣医さんは責任を感じたのか入院費は要らないということでした。
その後も年齢のせいで回復が遅いという理由で更に2週間延期になりました。
そして運悪く、獣医さんは10日間の出張に行ってしまったのです。
私達はせめて日光浴をさせようとボリに会いにいきましたが、痩せてフラフラしており、獣医さんの監督の目がない看護師はボリが食べないからと言って点滴しかしておらず、寒いのに毛布すらなく、ボリはとても衰弱していました。
その場で慌てて獣医さんに電話をして現状報告しましたが、電話を切った後、パパはライブ配信中なのに数分間言葉を発することが出来ませんでした。
獣医によると手術は成功したが、傷から出る体液が止まらず傷口周辺を腐らせており、傷を乾かすための抗生剤を投与中だが長くは使えないので、その後は栄養補給の点滴をして軟膏を塗るしかないとの話でした。
そしてパパが助かるかどうかを尋ねたら、獣医さんは「難しい」と答えたのです。
ママが直ぐに別の動物病院を探したり、配信を見ていたみんなが治療費をスパチャしたり、私達は残された道を必死に探しました。
その病院は遠かったけれどすがる思いで電話してみました。
しかし、ろくに私たちの話も聞かない典型的な良くない医者で、明日の診察時間に連れてこいと言われました。
結局今の病院以上の所は無いし、もう出来る事も無いのです。
私達はボリの傷口の消毒の仕方を看護師から習い、彼女を家に連れ帰りました。
ボリは沢山砂糖水を飲み、シリンジでレバーペーストを食べ鉄分水も自力で飲みました。
ママは絶対に治す!と一生懸命でした。
私達の少ない持ち物で暖かい寝床も作りました。
必ず治ると固く信じて私達は食事も忘れて世話をしました。
しかし衰弱が激しく、ネパールではみんなが寝静まる夜9時に、いつも獣医に連れて行けない野良犬達にワクチンを打ってくれる出張獣医さんが来てくれました。
しかし彼が点滴をしようとしても、液が流れないほど血液がない状態で「なぜこんなになるまで放置した?塗り薬も間違っている」と言われました。
彼はお金も受け取らず、朝また来るからと帰って行きました。
その夜、暖かい部屋でボリに水分補給したり、食べ物をあげたり、身体を拭いてあげたり、私達の保護犬マロも心配そうに寄り添ったり、みんなで素敵な時間を過ごした後、ボリは私達の腕の中で静かに息を引き取りました。
マロの誕生日として作った「マロ記念日」の翌日のことでした。
ボリは私達が無事マロのお祝いを終えるまで頑張ってくれたのです。
あんな冷たくて暗い鉄のケージの中で、独りぼっちで逝かせなくてよかった。
それだけがせめてもの救いでした。
どこで歯車が狂ったのか、色んな悪い偶然が思い浮かびましたし、大家さん家族にはとても辛いことを言われて深く傷つきました。
でも苦しいからとここで立ち止まってしまっては、ボリやウィッシュに顔向けが出来ません。
私達は全てを受け入れ、誰も責めず、前に進むと決心しました。
パパは鍬を持ってバイクにボリを乗せて標高1800mの高い山の頂上に行き、自分の手でボリを埋葬しました。
そこはカトマンズ全部を見渡せる、女王ボリに相応しいとても綺麗な場所です。
今頃はまた強いボリに戻って、可愛いウィッシュと一緒に
みんなを見守ってくれているに違いありません。
筆者:Bo Giant
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