ロックダウンの中、マロの為にネパールに残る決意をした矢先、ある重大な事件が起こりました。
私達が家を少し留守にした間にマロが寂しくて吠え始め、それを聞いた上の階に住む大家さんの犬も大声で吠えて止められなくなっていたのです。
大家さんはとても怒って、私達にマロを捨てるか、外で飼うか、引っ越せと言うのでした。
元々犬を飼う許可はありましたが、ネパールは大家さんが全てを決定する国なのです。
パパは何度も謝りましたが、許してもらえませんでした。
日本であれば、簡単に引っ越せば良いのですが、ただでさえ普通ではないネパールの状況が、その時は更に最悪だったのです。
ネパールはその時完全なロックダウン中で、外出した人が18,000人も逮捕されていました。
警察の力は絶大で逆らうことは絶対に許されません。
許可時間に買い物に行くのですが、パトロールしている警察に見つからないように野良犬達にエサをあげるのはとても危険な行為でした。
立ち話をしていた数人のおじさん達が沢山の警察官に囲まれて激しく叱られている場面にも遭遇しました。
普段人々からクッキーをもらえていた野良犬達は空腹で痩せていきました。
そこで私達はわずか90分の外出許可時間にも沢山のドッグフードをリュックに詰めて彼らにエサをあげに行きました。
しかしインドや中国の国境も封鎖され物資も入ってこないので、人間の生活さえ不足だらけで、お店の営業時間もどんどん短くなっていきました。
肉と牛乳と野菜のお店しか営業を許されなかったので、他のお店はシャッターを少しだけ開けて隙間から営業しました。
私達もお米が買えなかったのでこっそり食パンを買い込みました。
車やバイクのナンバーが奇数か偶数かで、乗って良い日も制限されました。
野良犬を獣医に運ぶためのバイクも車も使えない日もありました。
許される外出時間も短く、私達は警察に見つからないように必死で動きました。
ネパールには不動産屋も引越し業者もないので、全て自力でやらなければなりません。
大家さんが絶対的権力を持ち、住人には何の権利もありません。
そして日本大使館の飛行機も行ってしまいました。
私達は不安で悩んでは毎晩泣いていました。
ぐっすり寝ているマロに触れて暖かい体温を感じただけで、涙が止まらないこともありました。
そして考え続けた末に、マロを一時的に預かってくれる里親を探す決意をしました。
離れるのは辛いですが、私達の新しい家が見つかるまでの我慢です。
退去期限の2日後まで、短い買い物許可時間にマロを抱いて必死に里親を探し回りました。
それでも見つけられず、大家さんに頼んでなんとかもう1日だけ期限を延ばして貰うことが出来ました。
そしてとうとう最後の運命の日に、太い眉毛の小さな雌の犬ジャッキーを飼っている広い家が見つかったのです。
彼女のお母さんはダルメシアンでお父さんは野良犬です。
生後1カ月でも彼女はとても気が強く、マロが仲良くできるか心配でしたが、優しい家族は預かってあげるよと言ってくれました。
そして1週間後にはすっかり仲良しになった2匹でした。
私達は何度もマロに会いに行きました。
マロはジャッキーの先生になり、彼女はとても行儀のいい子になりました。
しかしそのうちロックダウンが更に厳しくなり、私達は全く会えなくなってしまったのです。
そしてそのせいでマロは夜泣きするようになり、彼等もまた私達のように大家さんから厳重に注意されてしまったのです。
マロはまた行き場を失ってしまいました。
外出禁止で新しい家も見つからず私達は四面楚歌でした。
果たして、マロはどうなってしまうのでしょうか?
つづく、、、
筆者:Bo Giant
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