沢山の野良犬たちの命を救うネパールの避難所が出来るまで

バスパークで酔っ払いに噛みつき、探して毒殺すると言われたマリアにやっと見つけた家でしたが、逃げ出してバスパークに戻ってしまい(マリア物語)、私達はまた預け先を探して奔走していましたが、オレオを預かってくれている私達のヘルパーの若い女性の家で、マリアも長期預かりをしてもらえることになりました。

彼女の父親は犬が走れるように家の一部を改装しようとまで言ってくれたので、それなら費用を出すからと私達は盛り上がりました。

しかし次に電話をした時に彼から衝撃の発表がありました。

なんと彼らの家の地主から、その土地を売るので更地にして出て行けと言われたそうなのです。

ネパールでは地主が好きな時に好きなように借主に退去を要求出来るのです。借主に権利などありません。

彼らは自分達で建てたコンクリの家や収入源のトマトとカリフラワーの畑も失います。

そして、そうなったら私達はまた初めからマリアとオレオの居場所を探さなければなりません。

でも、もうそんな場所は全く思い当たりません。

私達は予想外の展開に絶望しました。

しかし彼の話は終わりではなかったのです。

なんとすぐ横の広い空き地が借主を募集し始めていたのです。

ネパールで小さな避難所を作りたかった私達ですが、外国人はまず土地購入が出来ませんし、法人格の手続きも出来ず、もちろん高額な土地代も支払えません。

さらに住込みの従業員を雇えば全く手の届かない金額です。

もし土地を借りて作るにしても、私達にはやはり支払えません。

それが、もしその土地を借りて、彼らが住んで犬達の世話をしてくれるなら、不可能なはずの避難所建設が可能になるのです。

目の前の雲が一瞬で晴れ、キラキラ輝く希望が見えてきました。

地主は、好条件の土地だからその日の夕方までに返事をと言うので、直ぐに彼に連絡してもらい、契約に向けて進み始めました。

しかしその後、彼は土地代の前払いや新しい家の建築費が払えないから、やはり家族で遠くの田舎に行くと言うので手持ちの金額を聞いたところ、ネパール人の平均月収ほどしかなく、それは必要な額のたった4%ほどで、親戚に借金しても70%近くは足りません。

実は、彼はコロナのせいで失業して、やっとトマトを栽培して売ろうとしていた矢先だったのです。

しかし、こんな奇跡的なチャンスは二度と訪れないと思い、私達は不足分に相当する犬4匹の今後の世話代を彼らに前渡しすることを伝え、地主と彼らの契約が完了するのを待ちました。

ネパールでは普通のことですが、地主は約束の日に現れず、数日後やっと来たと思ったら暗くて書類が見えないからと帰ったり、私達は電話をしたり毎朝メールを確認しては、がっかりする日が続き、結局彼らが契約出来たのは2週間後でした。

知らない間に地主の心変わりで別の人と契約してしまうことも許される国なので、私達は本当に緊張しながら待ちましたが、契約書はしっかりしたもので、避難所として使う許可もあり安心しました。

私達とその家族は犬の世話などに関して細かい契約をかわしました。

これでようやく避難所建設へスタートを切れたのです。

そして直ぐに色んな見積もりが始まりました。

高いフェンスに囲まれたドッグランの周りにヘルパー家族の部屋があり、広いトマト畑に繋がります。

犬が眠るための部屋もありケージが置かれます。

一部には屋根や、ネパールでは珍しい人工芝も敷かれます。

ネパールでは施工主が全ての材料を用意したり、作業員の昼食を用意しなければなりません。

別の場所に住んでいる彼の息子から新品のレンガの見積もりを渡されたのに現場にあったのは中古で、騙されたかと思ったら、隣の家を壊しているのを見て安く手に入れられると思った父親が勝手に仕入れていたり、マリアが突然震えが止まらなくなり感染症で入院したり、遠い日本から遠隔でやり取りするパパさんママさんは心身共に不調になり、一言では言えない本当に厳しい日々でした。

ただ信頼のおける大事な現場監督は、ネパール大震災後にパパと一緒に復興ボランティアをしたネパール人です。

彼は奥さんが日本人で、日本でも働いたことがあるので、毎日きちんと仕事を行い、信じられないスピードで作業を進め、雨季にも関わらずあっという間に避難所もヘルパーの家も完成させてしまったのです。

何もかもが人力で、鉄の扉さえその場で鉄板を溶接して作るDIYのような手作業でした。

作業員が一生懸命働いたのは、俸給がきちんと渡されたからです。

ネパールでは働いた後に、支払われないこともよくあるのです。

コロナで仕事がないので、女性が重いレンガを頭にかけた布で運ぶ重労働でも、丸一日働いて10ドルほどなのに、数ヶ月分の賃金をもらえないこともあるのです。

そして完成の日、初めてドッグランに放たれたダディと先に待っていたマリアとオレオの家族が揃い、伸び伸びと嬉しそうに走り回り私達は本当に避難所建設をやり遂げたのだと、この奇跡に心から感謝しました。

とうとう、みんなの夢が現実になったのです。

それ以来、避難所は私達の想像を超える役割を果たしています。

避妊などの手術の後でも、清潔で安心の場です。

毎日投薬が必要な療養でも、しっかりケアしてもらえます。

経過観察が大事な時は、沢山の家族の目があります。

犬社会のルールを学ぶべき時は、先住犬が教師になります。

私達も何かある度に慌てて預け先を探し回らなくてすみます。

もちろん毎月の家賃、人件費、餌代、治療費など維持費は高額ですが、これからも頑張って進化していきたいと思います。

つづく、、、

筆者:Bo Giant

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